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·運営·8 min read

【第3話】5人のフォロワーに向かって、毎日叫んでいた

マーケティング個人開発社会心理学物語タクミとシュウ

マーケと社会心理学を、対話で学ぶ物語シリーズ「タクミとシュウ」第3話。前回 → 第2話

ep2で、フォロワーは5人だった。シュウは「その5人を、50人にしろ」と言って、消えた。「どうやって」の答えは、聞けなかった。だから俺は、自分なりに考えた。答えは単純だ——毎日、投稿すればいい。

その週、俺は毎日Xに投稿した。

『【個人開発】AIが議事録を自動でタスク化するツール、作りました🙏 ぜひ使ってみてください!』 『今日も開発がんばった。あとは認証まわりだけ…!』 『リポストしてくれたら、泣いて喜びます🙏🙏』

我ながら、必死だった。10連投した日もある。1週間後。フォロワーは、6人になっていた。1人増えて——しかもそれ、botだった。

> ずいぶん大きな声で、誰もいない部屋に向かって叫んでるな。

シュウ:1週間で1人。しかも機械か。

:……っていうか先生、あんた詐欺師でしょ。なんで、その言うこと信じなきゃいけないんすか。

シュウ:信じなくていい。話半分で聞け、と言ったろう。ただ、人を騙して飯を食ってきた俺だからこそ、何が人を動かすかは知ってる。使うかは、お前が決めろ。……一つ聞く。お前のその投稿、誰に向かって叫んでる?

:誰って……フォロワー。5人の。

シュウ:砂漠で看板を立てて、客が来るか。……お前のツールを欲しがる個人開発者は、今、どこに集まってる?

:……Xの個人開発の界隈とか。Zennとか。

シュウ:そこには、もう人がいる。お前の空っぽの部屋じゃなくな。出向け。ただし、売り込むな。

:売り込まずに、何しに行くんすか。

シュウ:先に、与えろ。

:与える? 何を。

シュウ:お前が今週半日溶かしたバグ。あの直し方を、記事にして置いてこい。同じ所で詰まってる奴のためにな。

:……いや、バグ記事なんか書いて、何になるんすか。俺が売りたいのはツールで、Next.jsの小ネタじゃないんすけど。それ書いても、ツールの宣伝にならないじゃないすか。

シュウ:(鼻で笑う)そこだ。お前が今までやってたのは「俺のツールを使え」——ただの広告だ。誰も、広告なんか追いかけん。スクロールして終わりだ。だが「お前の半日を救う」記事は、広告じゃない。贈り物だ。人は、広告は無視するが、自分を助けてくれた奴のことは、覚える。

:……でも、それ、俺のツールには繋がらないっすよね。

シュウ:今は繋げるな。繋げた瞬間、贈り物が広告に化ける。……ただ、置く場所は選べ。技術の困りごとを、誰がXで調べる。みんなGoogleに打つ。「Next.js middleware 効かない」とな。お前の答えは、Xで叫ぶんじゃない。その"検索の先"——ZennかQiitaに置け。

:……たしかに、俺もエラーはググるわ。

渋々、俺はそのバグ——Next.js を16に上げた途端、middleware.ts が効かなくなって、proxy.ts にリネームしないと動かない罠——を、再現と直し方込みでZennに書いた。「誰かの半日が浮けば」とだけ添えて。

数日後。記事は、Google検索から、ぽつぽつ読まれ始めた。「Next.js middleware 効かない」で詰まった奴らが、辿り着いてくる。コメントも、2つ付いた。『助かりました』『丸一日溶かすとこでした、感謝です』。

:……いや先生。読まれて、感謝されて。で、フォロワーは?

シュウ:……増えてないだろう。

:ゼロっす! 結局みんな、バグだけ直して帰っていく。与え損じゃないすか!

シュウ:当たり前だ。一回バグを直してもらっただけで、誰がお前を"追いかけたい"と思う。フォローってのは、"こいつの次も読みたい"の証だ。一回の親切で出るもんじゃない。

:じゃあ、意味なかったって——

シュウ:いや。お前は今日、初めて"無視"から抜けた。7回、お前の叫びは空気だった。誰の耳にも入らなかった。今日初めて、知らない誰かが、お前に"ありがとう"と言った。……無視と、感謝。天と地の差だ。

:……でも、フォローは。

シュウ:ずっと先だ。"次も読みたい"と思わせる理由——それを作れるかどうかが、お前が"フォロワー"なんて言葉を手にできるかの、分かれ目になる。

:それ、どうやって……。

シュウは答えなかった。空のカップだけを残して。顔を上げると、もう、誰もいなかった。

ーーーーーー(続く)ーーーーーー


今日の1つ

客は呼ぶな。客が"もういる場所"(困って検索する人が辿り着くZenn/Qiita)へ行け。そこで「俺のツールを使え」という"広告"でなく、相手を助ける"贈り物"(無償のノウハウ)を置け。人は広告を無視し、助けてくれた相手を覚える。一回の親切でフォロワーは増えないが、"無視"が"ありがとう"に変わる——それが最初の一歩。

※ この物語はフィクションです。理論(返報性/コミュニティ集客)は一般に知られた考え方を題材にしています。

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